レストランにて
イギリスでの式から約一ヶ月後、日本でもお披露目をさせてもらいました。
この大きな節目に皆にお礼の意味を込めて。




すでに式は終わっていたので、とにかく来てくれる人たちに美味しいものを食べて帰ってもらいたいと、それだけを考
えていました。なんやかんや言っても、やっぱり結婚パーティは新郎新婦が主役になってしまい、私たちの好きな形
になってしまいます。それに付き合ってもらうのですから、食事だけはどうしても吟味したかったのです。そして、普段
あまり味わえない雰囲気のところを選びました。目星をつけたところを何軒か下見をしましたが、そのレストランは
一風変わっていました。その日はたまたま定休日ということもあって、店内はまっ暗でした。入り口は確かに一階に
あるのですが、レストランは地下でした。幅の広い階段を降りるとまたもや銀ピカの鎧が…。手探りでドアをあけると、
窓のないその待合室は目を凝らさないと、中がよく見えないほどでした。そして突然、天井からぶらさがっている剥製
が目に入った時には思わず悲鳴をあげるところでした…。といっても、決して趣味の悪いお店ではありません。知る人
ぞ知る、有名なロシア料理のレストランなのですから。お店の人が気がついて声をかけてくれ、照明をつけると、そこ
はまさに重厚な雰囲気の漂う高級レストランでした。私たちはすっかり気に入ってしまいました。外の見える明るい
ところも良いけれど、それじゃあまりにも普通すぎる。おへそが少し横についている私たちは料理を試食し、すぐに
そこに決めました。その時、前のステージで歌っていた黒人のピアノの弾き語りがあまりに良かったので、彼にパー
ティの話をして、当日歌ってもらうことにしました。是非デュエットを…ということで一度だけ音あわせをして、あとは
練習する時間もなくぶっつけ本番。見事に間違えました…。花嫁が恥をかくのもご愛嬌のひとつです。(と言って自分
を慰めました…)



もう一度ウェディングドレスが着られるのは、なぜか得した気分になります。今度は自然に…というわけにもいかない
ので、髪もメイクも頼みました。お色直しなどするつもりはありませんでしたが、ついでだから…ともうひとつだけ
欲張りました。似合うかどうか…だいぶ迷いましたが、やっぱりエジプトです。ええい!こんな時しか仮装なんてでき
ないんだから、皆には目をつぶって我慢してもらおう。その時おもしろいお店を見つけました。ドレスを縫ってくれるの
ではなく、当日一枚の布を体に巻いてピンで留めるだけでドレスに仕立ててくれる、というものです。節約にもなるし、
後で生地も使えます。初めて訪れて小さな声で希望を告げるとさすがに驚いてはいましたが、今までやったことがな
いということでスタッフの方たちは皆張り切ってくれました。アクセサリーも全部作ってくれました。あとはパンフレット
の作成が残っているだけでした。
その頃運よく…カリグラフィーに凝っている時で、よっしゃ、自分で作ろうと思い立ち、作成したものは印刷屋さんに
まわしましたが、出来上がったものの表紙にインクでまたひとりひとりの名前を書き入れました。こんなことで感謝の
気持ちが伝わると良いんだけど…と思いながら。時間があったので、裏表紙には式の時に撮った写真をつけることも
できました。
お店の表に飾る案内板は、アヌビー頼みました。と言っても、彼はもちろん家でお留守番。手縫いでタキシードを
作り、知り合いの写真屋さんで写真を撮りました。毛が黒いので、白い部分だけを作ればよいのですから簡単です。
写真を引き伸ばしてイーゼルに飾れば立派なものになりました。これは今でも部屋に飾ってあります。

         
  セッティングO.K!        うひゃ〜…       イギリスから持ち帰ったケーキとパンフレット
                                  
店内にはたくさんのテレビを並べて、イギリスでの式の様子を流させてもらいました。
しかし、なぜ日本ではこんなに緊張するんでしょう…。食事は喉を通らないし、いくら飲んでも酔わない。(ほとんど水
でした)好き勝手なことやっちゃったけど、少しは楽しんでくれてるだろうかとか、ロシア料理の嫌いな人がいたらどう
しようとか、用意した引き出物は大丈夫かとか、この期に及んでいろいろなことが気になります。
私も今までたくさんの結婚式に出席してきたので参加する側の気持ちもわかりますが、やっぱり反対の立場になって
しまうと、一回だけだから…とか、許してね、などと言いながら結局我儘なものになってしまうんですね。自己満足の
世界ですから。それでもこれだけやってしまうと、心のけじめもつきますし、これからの生活の覚悟も自然とできます。
海外の友人も多数やってきてくれました。20年以上手紙だけだった友だちとも再会できました。こういう場は、ある
意味で同窓会と同じです。他のことならともかく、結婚式だから…ということで来てくれるんです。
結婚をただの紙切れと言う人もいますが、やっぱり役所に届けるだけでなく、事情が許すなら一日ヒロインやヒーロー
になって、皆に祝ってもらうことで「そう、結婚するんだ。頑張らなくちゃ」という気持ちを自分で高めるのも悪くないと
思います。人より結婚が遅かったからなのか…もしかしたら昔からそんな願望があったのかわかりませんが、今でも
素敵な結婚式やパーティができたことを、関わった人そして来て頂いたすべての人に、(特にダンナには)心から感謝
しています。





実はこの後、このパーティに来て頂けなかった方たちや生徒さんたちに二次会を開かせて頂きました。
想像をはるかに上回る200人近い人数のため、時間による入れ替え制などということになってしまいました…。
この長い一日はとても言葉では言い表せないくらい、私にとって幸せな日だったことは言うまでもありません。
本当にありがとう!

新しい生活に入り、すぐに病院で検査をしたところ、やはり胆石だということがわかりました。早速入院をして胆嚢を
摘出しましたが、「よく平気だったね…」と医者に言われてびっくり。パチンコ大の石が合計8つくらいぎっしりと
詰まっていたそうです。どうりで死ぬほど痛かったはずです…。しかし、一生残る写真が、無理なダイエットもしないで
すんだのですから、ラッキーと言うほかないでしょう。
それでも、この儀式のすべてが終わるまで大事に至らなかったのは奇跡でした…。



      


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